「医療業界の営業って、毎日どんなことをしているんですか?」。そう聞かれると、いつも答えに少し詰まります。華やかに見られることもあれば、地味だと言われることもある。でも実際の1日は、そのどちらとも違う、もっと泥くさい積み重ねでできていました。
この記事では、私が15年続けてきた医療業界の営業の「ある1日」を、朝の訪問から帰社後の準備まで時系列で振り返ります。職種が特定されないようところどころぼかしていますが、仕事の手ざわりだけは、できるだけ正直に書いてみます。
📌 この記事の結論
医療業界の営業の1日は、朝から夕方まで担当先を回り続け、帰社してからやっと「まとめと準備」が始まる仕事でした。派手な商談ではなく、地味な積み重ねでしか信頼は生まれない。15年やって、それだけは確かだと思えます。
この記事でわかること
- 1日の始まりは、朝いちばんの訪問から
- 昼は担当先で、ほんの数分の面会に賭ける
- 昼ごはんは午後2時すぎ、移動時間という相棒
- 夕方の訪問と、帰社してからの「第2ラウンド」
- コロナで一変した、「待って会う」働き方
- まとめ:地味な準備の積み重ねが、信頼になる
1日の始まりは、朝いちばんの訪問から
私の1日は、朝8時半ごろからの訪問で始まっていました。まず向かうのは取引先です。朝のうちに1〜2件まわって、その日の足ならしをする。ここでの段取りが、その日1日の動きを決めると言ってもいいくらい大事な時間でした。
訪問の前には、必ず頭のなかで下調べをします。今日会う相手が、いまどんなことに関心を持っているのか。前回どんな話をして、何を宿題として持ち帰ったのか。それを整理してから動くのが、長年のルーティンでした。
この仕事を始めたころは、とにかく「伝えたいこと」を一方的に準備していました。でも、それでは相手の時間を奪うだけだと、何度も痛い目を見て気づきました。大事なのは、自分が話したいことではなく、相手が知りたいこと。だから準備の中心は、いつしか「今日は何を聞こうか」に変わっていきました。
昼は担当先で、ほんの数分の面会に賭ける
昼ごろになると、担当先のクリニックや病院を回ります。専門職の方に直接お会いして、役に立つ情報をお届けするのが、この時間帯のいちばんの仕事でした。
とはいえ、相手はみなさん多忙です。話せる時間は長くても数分、短ければ立ち話で終わることもあります。その数分のために、何時間も準備してきた——そう書くと大げさに聞こえるかもしれませんが、本当にそういう仕事でした。だから「何を言うか」と同じくらい、「何を言わないか」が大事だったのです。
うまくいった日は、相手から「それ、もう少し詳しく教えて」と聞き返されます。その一言がもらえたときの手ごたえは、15年経った今でも忘れられません。逆に、準備不足で空回りした日の帰り道の重さも、よく覚えています。
昼ごはんは午後2時すぎ、移動時間という相棒
意外に思われるかもしれませんが、昼ごはんを食べるのはたいてい午後2時から3時ごろでした。お昼の面会が一段落して、ようやく遅い昼食にありつく。お腹はぺこぺこですが、面会が立て込む日はそれが当たり前で、すっかり慣れてしまいました。
外回りの仕事は、とにかく移動時間が長いです。次の訪問先まで車で移動し、待ち時間が発生し、また移動する。一見「もったいない時間」に思えるこの時間が、実はいちばん大事だったと今になって思います。移動中は、さっきの面会を振り返る時間でした。「あの言い方は伝わっただろうか」「次はこう聞いてみよう」。誰にも邪魔されないこの時間に、自分の仕事を静かに点検していたのです。
恥ずかしい話ですが、10年以上前は、空き時間に営業車のなかで昼寝をすることもありました。今では考えられませんが、当時はそれくらいおおらかな空気も、まだどこかに残っていたのです。
夕方の訪問と、帰社してからの「第2ラウンド」
夕方になると、もう一度担当先を1〜2件まわります。そして会社に戻ってからが、ある意味で本当の勝負でした。今日の動きをまとめ、明日の段取りを組み、必要な準備を片づける。外回りが終わってから、ここで第2ラウンドが始まるような感覚です。
これに加えて、1週間に1〜2回は担当先での説明会がありました。さらに、夕方や土曜日に講演会やセミナーがあると、その準備も仕事に含まれます。インプットを怠ると翌日の面会ですぐに見抜かれてしまうので、勉強は本当に終わりがありませんでした。
正直に言えば、この「終わらない準備」が、若いころはしんどくて仕方ありませんでした。でも、ここで手を抜いた人と抜かなかった人の差は、数年後に驚くほど大きく開いていきました。下の表は、そんな1日の流れをまとめたものです。
| 時間帯 | やっていたこと | ひとこと |
|---|---|---|
| 8:30〜10:00 | 取引先への訪問(1〜2件) | 1日の足ならし |
| 昼ごろ | 担当先で専門職の方と面会 | 数分の勝負 |
| 14〜15時ごろ | やっと遅い昼ごはん | お腹はぺこぺこ |
| 夕方 | ふたたび担当先を訪問(1〜2件) | 一番足が重い時間 |
| 帰社後 | 今日のまとめ・明日の準備 | ここからが第2ラウンド |
コロナで一変した、「待って会う」働き方
15年もやっていると、業界の風景はずいぶん変わりました。なかでもいちばん大きかったのが、コロナをきっかけにした働き方の変化です。
それまでは、担当先で相手の手が空くのを「待つ」という時間がよくありました。控室のような場所で何十分も待ち、ようやく数分だけ話す。今思えば非効率ですが、その待ち時間にも、顔を覚えてもらうという意味がありました。ところがコロナ以降は、基本的にアポイントがないと訪問できなくなり、「待って会う」という文化そのものがなくなりました。効率は上がった一方で、ふらりと立ち寄って関係を育てる、という余白は消えていきました。
そんな中でも、ひとつだけ変わらなかったことがあります。それは「相手の役に立つ準備を、地道に続けた人が信頼される」というシンプルな事実です。道具や手段がどれだけ変わっても、この芯の部分だけはずっと同じでした。そしてこの働き方を15年続けるなかで、私は少しずつ「会社に依存しすぎることの怖さ」も感じるようになります。その話は医療業界15年で気づいた「会社依存」の怖さに詳しく書いています。
このシリーズでは、医療業界15年で出会った、忘れられない先生たちの話も書いています。仕事を通して出会った人たちのことを振り返ると、改めて学びの多い15年だったと感じます。よかったらあわせて読んでみてください。
※本記事は、特定の企業・職種・取引先が分からないよう、内容をぼかして書いた個人の体験談です。
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