老後のお金の準備は、どうやらもう終わっているらしいです。コーストFIREという言葉を最近知って、自分の資産と年齢を当てはめて計算してみたら、そういう答えになりました。
40代に入ってから、子ども3人の教育費と自分たちの老後資金を両方まかなえるのか、ずっと引っかかっていました。人に言ったことはありませんでしたが、内心それなりに不安でした。結論から言うと、その不安のうち「老後のほう」だけは、思っていたより早く片付いていたようです。
ただし、だから明日から働かなくていい、という話ではまったくありません。この記事では、家族5人・住宅ローンありの会社員が、なぜコーストFIREに「ほぼ」到達したと言えるのか、その理由と、まだ言い切れない留保を、盛らずに書きます。
この記事でわかること
» コーストFIREとは?「老後の準備だけ先に終わった」状態のこと
コーストFIRE(Coast FIRE)は、老後に必要なお金が、今ある資産の運用だけで用意できる状態のことです。coastは「惰性で進む」という意味で、あとは追加で入金しなくても複利で目標額まで滑っていく、というイメージから来ています。
ここが大事なところなのですが、コーストFIREは仕事を辞められる状態ではありません。今の生活費は今の労働収入でまかなう必要があります。終わっているのは老後の準備だけです。私も最初は「FIRE」の文字を見て早期リタイアの話かと思ったのですが、調べてみたらまったく別物でした。
FIREにはいくつか種類があるので、違いを表にしておきます。
| 種類 | 働き方 | 生活費の出どころ | 必要な資産 |
|---|---|---|---|
| コーストFIRE Coast FIRE |
今までどおり働く | 労働収入(全額) | 4種類の中では一番少ない |
| バリスタFIRE Barista FIRE |
パート・アルバイト等 | 労働収入+資産の一部 | 中くらい |
| サイドFIRE 日本での呼び方 |
副業・自営で少し働く | 資産収入+副収入 | やや多い |
| 完全FIRE 英語では単にFIRE |
働かない | 資産収入だけ | 年間支出の25倍が目安 |
調べていて意外だったのが、この4つのうち英語圏でもそのまま通じるのは上の2つだけ、ということでした。サイドFIREは日本でよく使われる呼び方で、海外の記事では同じような働き方もバリスタFIREに含めて説明されています。日本語で検索したときだけ種類が多く見えるのは、そのせいでした。
私が当てはまるのは一番上のコーストFIREです。ちなみに完全FIREのほうも一度まじめに計算してみたのですが、家族5人分の生活費で25倍を用意しようとすると1億円を超えます。桁が違ったので、そちらは早々にあきらめました。
» 理由①:投資信託と、残り20年以上ある複利の時間
1つ目の理由は、単純に運用に回せる時間がまだ残っていることです。
私が資産形成を始めたのはコロナ禍でした。それまでは、妻子がいるのにお金はほぼ全部使っていて、貯金はほとんどありません。カードの支払いで毎月が終わっていく感じです。そこからインデックス投資を始めて、6年で3,000万円弱まで来ました。中身はほとんどが投資信託で、全世界株式とS&P500のインデックスです。実際の配分はS&P500×オルカンのポートフォリオ全公開に書いています。
ここからが計算です。今ある資産を、これ以上1円も追加入金せずに65歳まで置いておくとどうなるか。年3%という保守的な利回りで置いても、子ども3人の大学費用を全部払い終えた後で、3,000万円くらいが残る計算になりました。公的年金とは別に、です。
年3%は、正直かなり渋めに見た数字です。5%なら5,000万円台、7%なら1億円に届きます。ただ、高いほうの数字で計画を立てると、下振れしたときに一気に崩れるので、私は一番低いシナリオだけを見て判断しました。それでも足りている、というのが「ほぼ到達」と書いている根拠です。
複利の効き方については複利の仕組みと長期積立の本質で、金額別の伸び方は積立シミュレーション早見表に書きました。自分で試したい方は、金融庁のつみたてシミュレーターが余計な広告もなく使いやすいです。自分の年齢と金額で当てはめると、思っているより時間の力が大きいことに気づくと思います。
すごいことは何もしていません。銘柄を当てたわけでも、収入が急に増えたわけでもないです。転職するような度胸もないので、その分を積立に回して放置していただけでした。
» 理由②:教育費を別の財布で先に取ってある
2つ目が、子育て世帯にとっては一番大きいところだと思います。老後資金と教育費を、同じ財布で数えないということです。
コーストFIREのシミュレーションでつまずくのは、たいてい「今ある資産」を全部老後用として計算してしまうパターンです。子どもがいる家庭で同じことをすると、大学入学のタイミングで前提が丸ごと吹き飛びます。我が家は学資保険と、子ども名義で貯めている分を老後の計算から完全に外しました。金額は書きませんが、大学費用は大学費用として別枠で先に取ってあります。
もうひとつ、我が家に有利だったのが子どもの年齢差です。ちょうど4歳ずつ離れていて、大学の在学期間が重なりません。同時に2人分の学費を払う年がない、というだけで家計はかなり楽になります。これは狙ったわけではなく、ただの結果です。
ちなみに教育費まわりで一番大きな方向転換をしたのは、貯蓄型保険をやめたときでした。結婚したタイミングで保険の窓口で契約して、夫婦で年間100万円弱を8年ほど払い続けていたものです。解約して戻ってきたお金は、そのまま子どもたちのジュニアNISAに入れました。この話は保険解約返戻金400万円をジュニアNISAに入れた話に書いています。学資保険を続けるか迷っている方は学資保険 解約すべき?NISAとの差額50万円で迷い続ける40代の話もあわせてどうぞ。今も迷いながら続けている話です。
» 理由③:家計が投資を取り崩さない形になっている
3つ目は地味ですが、ここが崩れると①も②も意味がなくなります。普段の生活で投資に手をつけない形になっているかです。
コーストFIREの計算は「今ある資産を触らずに置いておく」ことが大前提です。裏を返すと、家計が毎月赤字で、足りない分を投資信託の解約でまかなっている状態だと、複利の計算は成立しません。
我が家は家計簿アプリで毎月の収支を見ていて、旅行の前払いのような大きな一時的な出費がなければ、通常の月は黒字です。直近も5ヶ月続けて黒字でした。それと、ボーナスは投資に回さず現金で残すように方針を変えました。理由は増やすためではなく、想定外の出費が来たときに投資を売らずに済ませるためです。生活防衛資金も、今年中の到達を目標に積み増している最中です。この配分の考え方は夏のボーナスの使い道に迷う40代へに書きました。
実際、今年に入ってから十数万円の想定外の出費がありましたが、投資を1円も売らずに現金だけで吸収できました。地味な話ですが、こういう月をやり過ごせるかどうかで、10年後の残高はけっこう変わってくると思っています。
» それでも「達成しました」と言い切れない3つの留保
ここまで書いておいて何ですが、私は自分の状態を「達成」とは書かないようにしています。理由は3つあります。
1. 年3%を下回る長期停滞は普通にありえる。過去の平均が今後も続く保証はどこにもありません。10年、20年と低い水準が続いた時期は実際にありました。3%は保守的なつもりで置いた数字ですが、それを割り込む可能性がゼロだとは思っていません。私自身、去年の初めに数ヶ月かけてまとまった額が減った時期がありました。その後3ヶ月ほどで戻りましたが、1年に1回くらいは減る時が来るな、というくらいのスタンスでいます。
2. 住宅ローンの変動金利。今は繰上げ返済をせずに手元資金を優先していますが、これは金利が低いことが前提の判断です。変動金利が2.5%に近づいてきたら、繰上げ返済を再検討します。金利が上がれば毎月の返済額が増えて、③の「取り崩さない家計」のほうが先に崩れるからです。
3. 今から65歳までの生活費は、まったく別の問題。これが一番大きい留保です。コーストFIREで終わったのは老後の準備だけで、そこにたどり着くまでの20年以上の生活費は1円も解決していません。だから会社は辞められませんし、辞めるつもりもありません。
» 到達して、実際に何が変わったのか
正直なところ、生活は何も変わっていません。今まで通り会社に行って、朝は早く起きて、土日は子どもとどこかに出かけています。豪邸に住んでいるわけでも、急に自由になったわけでもないです。
変わったのは2つだけでした。
ひとつは、積立を止める判断ができるようになったことです。これまでは「いくら貯めれば足りるのか分からないから、とにかく積む」でした。今は必要額の見通しが立ったので、あと2年続けたら入金は止めて、その先は放置する、と決められました。これは意外と大きくて、毎月の手取りの使い道を考えるときの気持ちが軽くなりました。
もうひとつは、お金を使うことへの罪悪感が減ったことです。家族との旅行や体験は、後から買い戻せません。老後の心配が先に片付いていると分かってから、そこにお金を使うのをためらわなくなりました。この考え方は『DIE WITH ZERO』を読んで整理できた部分が大きいです。感想は『DIE WITH ZERO』の要約と感想に書いています。
逆に言うと、コーストFIREに届いても手に入るのはその程度です。劇的な変化を期待していると、たぶん拍子抜けすると思います。
» よくある質問
Q: コーストFIREにはいくら必要ですか?
年齢と目標額で変わるので、一律の正解はありません。計算式は「老後に必要な額 ÷ (1+想定利回り)の残り年数乗」です。たとえば65歳で3,000万円を目指す40歳の人が年3%で計算するなら、25年分を割り戻して今1,430万円ほど、ということになります。ネットで見かける金額はこの前提が人によってばらばらなので、自分の年齢と目標額で一度計算し直すのが確実です。
Q: 子どもがいてもコーストFIREはできますか?
できると思いますが、条件がひとつあります。教育費を老後資金と同じ財布で数えないことです。ここを分けずに計算すると、大学入学の年に前提が崩れます。順番としては、教育費の目処を先につけてから老後の計算をするほうが安全です。
Q: 到達したら本当に積立をやめていいですか?
理屈上はやめても届きます。ただ、計算がぎりぎりの状態で止めると、相場が下振れしたときに戻す手段がありません。私はあと2年続けてから止める予定です。少し余裕を持たせてから手を離すほうが、精神的にも楽だと思います。
Q: 到達したら仕事を辞められますか?
辞められません。コーストFIREは老後資金の準備が終わった状態で、今の生活費は労働収入でまかなう前提です。辞められるのは完全FIREのほうで、そちらは年間支出の25倍が目安になります。取り崩し方のイメージは資産の取り崩しシミュレーション早見表が参考になると思います。
- ✅ 追加入金なしで老後資金が用意できる状態のこと
- ✅ 前提は複利の時間・教育費の別財布・崩さない家計
- ✅ 留保は3%割れ・変動金利・65歳までの生活費
- ✅ 貯蓄型保険をやめて、積立を続けただけです
- ✅ 変わったのは使うときの気持ちくらいです
貯金ゼロから始めて、いま6年で3,000万円弱。特別なことは何もしていないので、同じような40代の方の参考になれば嬉しいです。
同じように子育て中で、老後のお金がぼんやり不安な方の参考になれば嬉しいです。朝5時ごろに新しい記事を更新しています。
※私は金融の専門家ではありません。この記事は我が家の一例と、その計算の前提を書いたものです。特定の金融商品をおすすめするものではなく、投資の判断はご自身の状況に合わせて行ってください。利回りの想定はあくまで仮定で、将来の運用成果を保証するものではありません。

